「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「フィオナ。君はもっと、頭が良いのかと思っていたよ。口の軽い使用人は、君と彼は仲良くなっているようだと話していたよ。夫の留守中に訪ねてくる夫の友人とも、仲良くなっているのか……今までの僕の苦労が何もかも、水の泡だ」

 前にジャスティナが教えてくれた通り、このエミリオ・ヴェルデが今まで私に男性が近づかないように裏工作をしていたんだ。

 今まで悩んだ長い長い時間、今までの消えてしまいたいとまで思ったみじめな気持ち。それを思えば、心の中は怒りで燃えつくようだった。

 けれど、今は捕らわれてしまっているルーンさんがどうなっているかが、心配だった。

 私の問題なんて後で良いから、それを早く解決しないといけない。

 歴代一位とも言われていた魔力のある彼ほどの人を、どうやって捕らえたのかも……私をあれだけさまざまな手段で追いつめたエミリオ・ヴェルデのことだもの。

 きっと卑劣な真似をしたに、決まっている。

「……聞きます。腕を離して。声をあげたりしない。逃げたりもしないわ」

 私が毅然としてそう言えば、事態を察しておびえて泣くとでも思っていたのか。つまらなそうに鼻を鳴らしたエミリオ・ヴェルデは頷いて腕を離した。

「では、僕に大人しく付いてこい」
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