「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

17 出来ない

 連れて来られた薄暗い地下の中にある空気は、冷たい。

 やはり私についていた護衛騎士の一人が買収されていたようで、他の二人は捕えられていた。彼らは無念をにじませるように連れて行かれる私を見ていたけど、味方だと思っていた人に裏切られたなら、不意をつかれても仕方ない。

 私は……今まで、何をしていたんだろう。公爵位を持つシリルと結婚したんだから、公爵夫人としての私の役目を果たすべきだった。

 エミリオ・ヴェルデのたくらみによって、自尊心を折られていた私は婚約前の女性としては落ち込むしかない状況にあった訳だけど、それとこれとは何も関係ない。

 もし、精神的に落ち込んだ自分が女主人としての役目を果たせないと思えば、夫のシリルに相談して代理を立ててもらうべきだった。

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