「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「なんでって……君たちは、誰よりも仲の良い親友だからじゃないの。きっと口の上手い悪い男に騙されて、お互いに何個か誤解はあったと思うけど……ジャスティナ嬢が君のことを大事に思っていたことは、俺が今ここに居ることで証明されていると思うけど」

「ああ……そんな」

 エミリオ・ヴェルデがいつ何をするなんてわからないから……きっと、大変だったと思う。

 けれど、朝も夜もあの子は私を心配して、見張っていてくれたんだ。あの人が私を狙っていることを、知っていたから。

「……おい」

 不意に聞こえた声に、私とシリルは前を向いた。彼は鍵を開けてくれたみたいで、扉の外には既に暗くなった空が見える。

「ルーン。鍵が開いたのか?」

「うん。まあ、扉は開いた。開いたけど……新たな危機、到来だ」

 シリルと私は外へと進み出たルーンさんを追って、前へと進んだ。

 空に浮かぶ大きな顔を見て、息をのんだ。モンスターの種類も何も知らない私にもあれが、何者かを理解出来る。

 絶対に人間にとって、良くないものだ。

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