「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

25 危険度ゼロ(Side Rune)

 歴代随一と言われる魔力量を持って産まれ、なんでも出来る魔法使いになった感想はって?

 特に語ることは何もない。

 普通。

 魔法使いとして認められた当初に感じていたはずの万能感など、とうになく。

 ただただ、生きているから惰性で、その先も生きているような気がしていた。

 人の一生では使い切れぬ現金を手にして、働く必要なんて何もないのに、いよいよ面倒な立場から逃げたいと思うまで魔塔を辞めようとしなかったかと言うと、要は単なる暇つぶしだ。

 生きるということは死ぬまでの時間を埋めるだけの、単調な作業。

 俺にとってはある時点まで、そうだった。
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