「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 ジャスティナは幼い頃は人見知りで引っ込み思案(じあん)だったんだけど、まるで花のつぼみがほころんで行くように、大人になるにつれ美しく気高い薔薇(ばら)のような素敵な女性へと成長した。

 私は当たり前のようにそんな彼女が大好きだったので、お茶会にも夜会にも常に連れ立って出席しともに居たものだ。

 ただ無邪気(むじゃき)で居られた時を過ぎて、彼女の素晴らしさを褒めそやす異性の美辞麗句(びじれいく)を聞くたびに、私の心の中にはどす黒い何かが渦巻くようになってしまった。

 では、私はどうなのかしら? と聞きたいけど聞けなかった。彼らだってそう思っているのなら、口にしているはずだもの。

 礼儀ある紳士で大人だから、あからさまにジャスティナと私の両者を比較したりなんてしない。

 けど、その隣に居る私のことには一切触れない。言わなくても、彼らの言いたいことはわかった。

 社交界デビューから一年経ち、ジャスティナと私はいまだ婚約者が決まっていない。けれど、彼女は降るようにある縁談を前に迷っているだけだし、私には縁談は来ない。

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