「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 優しくて庶民出身のシリルは妻の私のことを優先してくれるようだけど、貴族の家なら普通は逆だ。夫の趣味を理解するのが、妻の役目なのに。

 ベアトリス様が諦めてくれて、役目を終えた私がもし違う貴族と結婚するなら、彼の持つ常識には慣れない方が良い。

「……シリルは、何処に行きたいですか? 私も貴方のこと、知りたいです」

 私がそう言って微笑めば、返事を待っていた様子だったシリルはパッと顔を輝かせた。

「それはそれは、嬉しいことを言ってくれるね。では、明日の休みは、俺の行きたいところにしよう!」
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