「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。

07 不安

「良いね。すごく可愛い。これも注文しよう……追加のお金が掛かっても良いから、急ぎで出来る?」

 彼の選んだドレスを着た私が試着室を出ると、シリルは嬉しそうに笑顔になった。注文を受けた店員はどんどん机の上に積み重なっていく注文用紙に、喜びを隠せない様子だ。

 もう……数え切れないくらいの枚数のドレスを、注文している。

「……あの。本当に良いんですか?」

 昨日、私はシリルが行きたいところに行きたいと言ったはずなんだけど、なぜか私のドレスや装飾品を選ぶ流れになってしまった。

 この流れは私には、ぜんぜん理解出来ていない。

 だって、彼は厄介な聖女ベアトリス様が諦めれば私と離婚するつもりだろうし……そんな私に、こうやってドレスや宝石を買っても仕方ないのに。

「良いよ! 俺は可愛い妻が欲しがるものくらい、何でも買えるよ。そうそう。本来なら貴族は婚約期間中には、婚約者の購入したドレスで夜会に出るんだよね? 急いで結婚したかった俺のせいで、そういう経験をフィオナにさせてあげられなかったお詫びに、好きなだけドレスを買って良いよ」

 シリルは色々と不都合な状況になってしまった私にお詫びとして、ドレスを購入してくれている……のかしら?

 そう思えば、こんな人気店でたくさんの高級ドレスを発注するのも確かにわかる気がするわ……。それに、生地や仕立てが良過ぎて、このお店で頼むなら私の実家のノワール伯爵家だと、年に何枚かが限界だもの。

「ありがとうございます。すごく、大事にします……」

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