「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「いいや? 俺は知っての通り、勇者一行に選ばれた魔法使いで、魔王も倒している。正直言えば、ベアトリスの対処は面倒そうだけど、やってやれない訳はないと言う程度だし」

 あっけらかんとして言ったルーンさんは、本当に怖いものはなさそうだった。

 私もこんな風になれたら、良いなあ……。

「そうですよね……ルーンさんは、そうでした」

 勇者シリルのように、彼だって選ばれし者。その他大勢とは、違う人たち。

「……何? この手紙の送り主の親友さんに、フィオナは勝てない何かがあるの?」

 ルーンさんは私が何かを言いたいと察したのか、椅子に腰掛けて頬杖をついた。

「全部です」

「……は? 全部? どういうこと?」

 私の話が良くわからないと首を傾げたルーンさんは、眉も寄せていた。けど、一度くちびるからこぼれてしまった言葉は戻らない。

「……私はジャスティナには、何をしても敵わないんです。何もかも。私は美貌も才知も何もない。気の利いた会話だって出来ないし、誰にも必要とされないんです」

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