「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「あんた。いつも私なんてって言うけど……何の不満があんの。裕福な貴族に生まれて姿も可愛くて、自分で努力をしなくてもそれなりの教育だって受けられている。これ以上に、何が欲しいの。何を望んでいるか言えば、俺が叶えてあげるから言えよ」

「……そんなこと。私……私は」

 私を見るルーンさんの可愛い顔は、今まで見たことのないくらいに真顔だった。

 彼は魔法使いでそれこそ私には想像もつかないことも、何でも出来てしまうんだろうけど……私のこの消えてしまいたいくらいに、情けなくてみじめな気持ちを埋めてくれることなんて、出来るんだろうか。

「その……なんか、良く出来た親友と比べてっていう話は、この前にもう聞いたよ。だから、あんたをシリルが好きじゃないんなら、俺が貰うよ。俺だって魔王討伐の報酬なら、たんまり貰ってるから。爵位だって持ってる。あんたが王都に残りたいなら、それも叶えても良いよ」

「でも……」

「あのさ。あんたとその親友を並べて、親友を選んだ連中はあんたの中身を知らなかっただけだと思うよ。何も劣っていない。俺から見れば同じくらい可愛い」

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