「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 自分が馬鹿なことは知っていたし、意気地なしだと罵られようがただ怖かった。こんな私の情けない気持ちは、きっと誰にもわかってもらえない。

 今までジャスティナと私が並んでいて、私を選んでくれた人なんて……本当に、誰も居なかったんだから。

「あのさ。もう……わかったから。シリルと別れてきなよ」

「……え?」

 いきなり静かに話し出したルーンさんの言葉に、私は顔を上げた。

「そうしたら、俺と付き合えば良い。人妻が泣いていても、慰められない。別れてきなよ……辛いことのあるここから、連れ出してあげるから」

 いきなりルーンさんの言い出した言葉に驚き、思わず涙を止めてしまった私は、良くわからなくなった。だって、これってシリルと別れればルーンさんが私と……?

「えっ……でも、私なんて」

 ルーンさんはわかりやすく顔をしかめると、言葉を遮るようにして話し出した。

< 70 / 192 >

この作品をシェア

pagetop