「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 結婚式は一生に一度だから私の納得のいくものにしたいと言ってくれて、本当に彼が優しくて嬉しい。こういうところも好きだから。

 優しいのは良いんだけど……困ったことに、人前ではありえないくらいに視線と言葉が甘過ぎる。

 こういう場所で働く店員さんやお針子さんたちは慣れたものだろうけど、どこに行っても注目の的になる姿の良い夫に慣れない私には本当に恥ずかしいし居心地が悪過ぎる。

「もう。シリル……そうして、褒めてくれるのは、嬉しいけど。恥ずかしい。あんまりおおげさに言わないでほしい……」

「ごめん。つい、思っていたことを、そのまま口に出してしまった。どうする? さっき見たドレスも、気に入っていたようだけど」

 ごめんとは謝ってくれるけど、シリルはぜんぜん悪いと思ってなさそう。この前、お互いの誤解が解けて、彼との距離は目に見えて縮まった。

 男性に免疫のない私には……本当に、近過ぎるくらいに。

「これ……すごく好き。可愛いもの。シリルはどう思う?」

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