冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

騎士として(キース視点)

 私……キース・エイダンの生家であるエイダン侯爵家は、代々多くの高名な騎士を輩出してきた家柄で、その中には歴代の正騎士団の団長を務めた者も何人もいた、いわゆる由緒正しい家柄というやつでした。

 そんな家の長子として生を受けた私には、自分もやがてはそうなるのだと信じて疑わないような高慢で無知な人格が身に付いてしまった。なまじ運動能力や勉学、そして魔法に置いても多少の才能と言えるようなものがあったことが、私に大きな(おご)りを植え付けてしまったという、ありがちな話です。

 ただ、誰でも幼いころには純粋な夢を抱くもの。絵本の中の騎士に思いを()せ、将来は弱者を助け、悪を(くじ)く立派な騎士となりたい。そんな風に思った頃も……ちゃんと、あったのですよ。

(強く、気高い騎士となり、私も将来人々の役に立つのだ……!)

 内心でそんな夢を抱きながら、己の思い描く騎士になるべく努力を続ける日々。
 そのまま真っ直ぐに成長できていたなら、まだよかったのかも知れません。
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