冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 ですが、それは叶わなかった。今思えば、自分の意志をそこで貫けなかったことが私の生来の心の弱さを表していたのかも知れないと、なんとなく感じています。

 そう、キース少年は成長にしたがい、何のために己を磨き、力を付けるのかということに悩み始めてしまったのです……。


 なぜそうなってしまったか……それにはふたつの出来事から来る不安が徐々に頭を(もた)げてきたからと言えるでしょう。

 ひとつは、我が父が口にした……『騎士とはお前の思っているようではないのだ』という言葉。

 彼は聖騎士団の団長を務めたこともある厳格で冷たい人物で……しかし家族には優しかった。そんな父のような立派な騎士になりたいという私に、彼は決まって喜ぶのではなく悲しみを讃えた瞳で諭すように言う。幼い私はそれを、華やかで煌びやかなものではなく、地道な研鑽(けんさん)の上に成り立つ大変な職務なのだと解釈していましたが……年を重ねるにつれ、徐々にその本当の意味が分かり始めたのです。
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