冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

弱い自分(リュアン視点)

 外勤帰りの夕方のことだった。

「疲れているところすまないが、お前たち……セシリーの姿は見かけたか?」
「リュアン団長、お疲れ様です! 僕は見かけなかったですが、もうちょうど帰るくらいの時間なんで、職員控え室にいるんじゃないですかね?」
「そうか。お前たち、今日もありがとうな」
「いえいえ、団長も早めに休んで下さいよ」

 魔法騎士団の敷地内に戻ってきた俺はやれやれと肩を回しつつ、外にいた仲間の騎士たちに声を掛け、魔法騎士団本部の扉を潜る。

 ここ数日、小隊を率いて近隣の村へ魔物の討伐に出向いていたが、やっとで後始末まで片が付き、ようやく帰りつくことができた。突然茸型の魔物が大軍で現れ、毒の胞子を村中にばら撒いたのだという。既に多くの村民が倒れ、やむなく救助を優先で行動せざるを得ないようなひどい状況。
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