冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

ラケルのお師匠様

 久々の休日。出掛ける予定のセシリーはエイラに身支度を手伝ってもらう。まだ三月の半ばで風が肌寒いだろうと、首に厚めのストールを巻いてくれながら彼女が口にしたのは、少し気になる話だった。

「そう言えば先日、あのリュアンという御方を町の治療院で見かけたのですよ」
「え、本当に? 何があったんだろう……」

 最近あまり顔色が浮かないから、密かに体調を崩しているのではないかとは思っていた。本人に聞いても答えは帰って来ないので、様子を窺うばかりだったが……団長としての意地があるのか、彼は倒れた時以来、徹底して弱みを見せない。

「御嬢様の最近の様子を伺おうと話しかけてみたのですが……彼はどうもあまり眠れない日が続いているらしく、なにかに悩んでらっしゃるようすでした。立ち入った話はできませんでしたけれど……」
「悩みかぁ……」

 それを聞いたセシリーはぎくりとなる。自分という不純物が魔法騎士団に混ざったせいで、リュアンに心労を掛け過ぎている可能性は無視できず、ついしょんぼりしてしまう。

「私のせいかな……」
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