冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 しかし驚くべきことに、邪竜となった悪王リズバーンは長らく封印を受ける内に耐性を身に付け、影響下から少しずつ逃れようとしている。抑え込むための魔力がより多く必要となるのは言うまでも無く、このままでは奴は遠からず封印を破り目覚めることになるだろう。宮廷魔術師の長たちからも、そんな見解が下された。

 同時に別の問題も発生していた。周辺に漏れ出した邪悪な魔力は大地や大気を伝って広がり、近年の魔物たちの大規模な発生にも繋がっている。

 このまま次の世代に託すわけにはいかない――国家の上層部はそう判断した。一度現在の封印を解除し、再び新たなものを施す……それが両国が協議の上に至った結論だ。
 
 それにはまず第一に、聖女の力の覚醒が不可欠。ファーリスデルでは既に、マールシルト家から太陽の聖女の血筋を受けた優秀な娘が選ばれたということでガレイタム王家は焦った。そこで国王は本筋のレフィーニ家だけではなく、長い歴史の内に血筋を繋げた傍系の家からも聖女の血脈を受け継ぐ者を探し、より優秀な資格者を得るため、候補の娘たちをひとところに集めて教育させることになった――。



「――その場所が、この離宮であったというわけだ。それがもう、今から十年前のことになる」

 腕を組んでいたジェラルドは、瞑目していた瞼を広げた。
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