冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「む……仕方ないやつめ。よいしょっと」
荷物を丁寧に脇に置くと、セシリーは犬を抱えて芝生に座り込み、鞄に忍ばせた応急処置道具を取り出す。クライスベル商会が直接人を雇い製作している幾つかの製品のひとつ、いわば謹製とも言える、消毒液やら包帯やらが入った便利なワンセット。
「ほら、ちょっとじっとしてなさいね」
「キャン……!」
セシリーは痛みに暴れる犬を押さえ、丁寧に傷口を消毒すると、血止めと包帯で傷を覆う。治療が終わり、てっきり怖がってそのまま逃げてしまうかと思ったが、犬はそのまま尻尾を振ってこちらを見上げ、また周りをくるくる回った。
「よしよし、よく我慢したわね、偉い偉い。あなた、ここで飼われてるの? このスカーフも騎士団のマークが入ってる物だし、さっきの本部に連れて行った方がいいのかな? 名前か何か書いてあるといいんだけどな……」
荷物を丁寧に脇に置くと、セシリーは犬を抱えて芝生に座り込み、鞄に忍ばせた応急処置道具を取り出す。クライスベル商会が直接人を雇い製作している幾つかの製品のひとつ、いわば謹製とも言える、消毒液やら包帯やらが入った便利なワンセット。
「ほら、ちょっとじっとしてなさいね」
「キャン……!」
セシリーは痛みに暴れる犬を押さえ、丁寧に傷口を消毒すると、血止めと包帯で傷を覆う。治療が終わり、てっきり怖がってそのまま逃げてしまうかと思ったが、犬はそのまま尻尾を振ってこちらを見上げ、また周りをくるくる回った。
「よしよし、よく我慢したわね、偉い偉い。あなた、ここで飼われてるの? このスカーフも騎士団のマークが入ってる物だし、さっきの本部に連れて行った方がいいのかな? 名前か何か書いてあるといいんだけどな……」