冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

ラナ・トルシェ(リュアン視点)

 リュアン・ヴェルナーこと俺――レイアム・セルキス・ガレイタムは現ガレイタム国王オルコットの第二子として、先代の月の聖女アルメリアとの間に生を受けた。

 俺の四歳上には王太子である兄ジェラルドが生まれており、このころからすでに次代の王として期待され、英才教育を受け始めていた。しかし生まれつき病弱だった俺の方は兄上と同じ歳になってもそれを受けることができず、加えて……これは王家にしか伝わっていない秘め事だが、この紫の瞳はかの悪王リズバーンと同じ色で、不吉なものとされているらしい。

 父であるオルコット王すら、そのことによい印象を抱かず、目を掛けていた兄上の成長も相まって、俺は城内で冷遇を受けていたんだ。

 そうした環境で幼い俺にとって、拠り所になったのはひとつのことだけ。生まれつき人より多くの魔力を授かっていた事実……それが無ければ俺は自らを卑下(ひげ)したまま、この後の……人生を変えた決定的な出会いにも立ち会うことなく、沈み込んだ生活を送るだけになっただろう。

 内向的な性格に育っていった俺は、日々王城の書庫に集められた本の世界に入り込むのが日課となった。普段ほとんど人の立ち入らない安心できる場所で、解読できない本を見つける度、内容を知るためさらに知識を求める。そんな循環を繰り返す俺が魔法というものの存在にたどり着いたのは、七歳のころだった。
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