冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 一件や二件の単発的な過失ならば理解できるが、クライスベル商会としても商品の仕入れには細心の注意を払い、店舗に出すまでにいくつかの工程で厳しい検品をこなしている。それらを潜り抜けてこんなにも問題が重なるはずもなく……そして話を聞いてみれば、苦情騒ぎを起こし店舗を閉鎖に追い込むまでの手際がよすぎた。明らかに裏で何者かが人為的な工作を行っている。

「しかもその後、急に支配人までが足取りを負えなくなりまして……」
「ふむ……調査は終わっているか?」
「ある程度は。告発者の周辺を洗ってみたところ、べジエ子爵とフォルアンサム男爵の手の者が関わり、金をばらまいて民衆を扇動しているようです。いかがいたしましょう……王立裁判所に告訴しようにも、まだ証拠が」
「それは確実なのだな? ならばまずはルバートの身柄を取り戻すところからだが、しかし……」

 オーギュストは苦虫をかみつぶしたような表情になった。そのふたりはともかく、その上にいる人物が問題なのだ。彼らは、この国で重要な地位を占めるある公爵の麾下についている。

「今しばらくは大口の顧客の動揺を抑えることに専念するように。ルバートの身柄は私が直接確認する」
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