冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「えっこれ、本当に入れるの? ただの石の置物じゃなくて?」
「魔法でこじ開けましょう、どいてください……! む……」

 キースは素早く魔法陣を描き、壁に手を添えた。しかし青い光は途中で立ち消え、魔法は発動しなかった。

「『解消』の魔法が掛けられている……いや」

 彼の隣にティシエルが走ってきて、真剣な表情で周りを見渡した。

「た、多分……これ自体が魔道具なの。動力源が内部に有って、自動で魔法を発生し続けてる。鍵となるアイテムがないと開けない……」
「どうしよう、屋敷内を戻って探す?」
「どこかに隠しているのか、子爵本人が持っているのか……問い詰めるしかありませんか」
「……待って!」

 ティシエルの目付きが変わり、彼女は羽織っていたローブを払って腰の道具袋から、幾つもの工具を指で抜く。
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