冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「――遅くなった、すまん!」
立ち並ぶ人々を左右に割るようにしてこちらに駆けてきたのは、もちろんリュアンだ。だが、いつもとは違うその装いは、周囲から浮き出るようにくっきりと輝いて見えた。
決して華やかすぎる出で立ちではなく、彼の細いシルエットにぴったりと合った濃紺の燕尾服に、いつもとは違った、しっかりと後ろに撫でつけた髪型。でもそんなシンプルな恰好だけで十分に彼の姿は周りを圧倒している。普段露わにならない彼の細い眉が涼し気で色っぽく、心を撃ち抜かれたセシリーはふらついた背中をエイラに支えられる。
「おい、大丈夫なのか? 衣装に合わせるために無理して飯を食わなかったんじゃないだろうな?」
「……む。そんなにいつもの私は寸胴ですか?」
「そんなこといってないだろ。心配してやってるのになんだよ……」
「あ~あ~もう、おふたりともここでは人目を惹きますわ~。さっさと手続きをして中にお入りなさいませ」
照れ隠しのやり取りに業を煮やしたエイラはふたりの背中を入り口から延びる列へと追いやる。ちなみに彼女も控え室で待機してくれるようだし、なにかあっても心配ないのは心強かった。
立ち並ぶ人々を左右に割るようにしてこちらに駆けてきたのは、もちろんリュアンだ。だが、いつもとは違うその装いは、周囲から浮き出るようにくっきりと輝いて見えた。
決して華やかすぎる出で立ちではなく、彼の細いシルエットにぴったりと合った濃紺の燕尾服に、いつもとは違った、しっかりと後ろに撫でつけた髪型。でもそんなシンプルな恰好だけで十分に彼の姿は周りを圧倒している。普段露わにならない彼の細い眉が涼し気で色っぽく、心を撃ち抜かれたセシリーはふらついた背中をエイラに支えられる。
「おい、大丈夫なのか? 衣装に合わせるために無理して飯を食わなかったんじゃないだろうな?」
「……む。そんなにいつもの私は寸胴ですか?」
「そんなこといってないだろ。心配してやってるのになんだよ……」
「あ~あ~もう、おふたりともここでは人目を惹きますわ~。さっさと手続きをして中にお入りなさいませ」
照れ隠しのやり取りに業を煮やしたエイラはふたりの背中を入り口から延びる列へと追いやる。ちなみに彼女も控え室で待機してくれるようだし、なにかあっても心配ないのは心強かった。