冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 王都近辺では魔力の節約のため、魔道具の使用が一時的に禁止され、多くの技術者や魔法使いが徹夜で議論を交わして封印を維持する知恵を絞り出そうとした。大量の魔石が王都に集められ、慌ただしく魔道具作成師や魔法使いが時計塔の上下を行きかい、わずかでも魔力の消費を減らせる方法を模索したが……。

「約一週間……それが両国の全ての知識を結集させ、できることは全てやって封印を持たせられる限界なの。それが、私たちの技術者の出した結論……」

 王城にて開かれたという会議に参加していたティシエルは、大災厄の封印について掻い摘んで説明してくれた。

「う~んとね……。封印の形状は砂丘の中心部を丸ごと覆う、クロッシュ(料理蓋)みたいなものを想像して欲しいんだけど……。それぞれの時計塔が発する魔力で出来た封印は、実は別々の役割を果たしてたんだ……」

 彼女はその場で取ったメモを見せてくれる。それによれば、封印はふたつのものからなる二重構造をしているらしい。月の時計塔から発された魔力は拡げた布のように上から災厄の発生源を包み込み……一方太陽の塔から放たれた魔力は網のようにそれに被せられて各所を押さえつけ、補強している。
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