冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

大事なものを懸けて

 赤髪の若い騎士がリュアンに鋭い剣の先を付きつけ言い放つ。

「リュアンさん。セシリーを追うならば、僕を倒してからにして下さい」
「何を言ってる……。今がどんなときか分かってるのか! 剣を下ろせ、セシリーを俺たちが守ってやらないでどうする!?」
「いいえ、どきません。もうすぐこの世界が終わりを告げるのだとしても……彼女の傍にいるのは、この僕だッ!」

 リュアンはラケルが杖を使うのを初めて見た。折りたたまれてペンほどのサイズになっていたそれを延ばし、彼は空に魔法陣を幾つも描く。

「剣を抜かなくても、僕は……あなたを倒す!」
「ぐっ、やめろ……!」

 いくつもの火球が尾を引いて襲い来る中、リュアンは『瞬駆』の魔法陣を描いた。回避に専念しながらラケルの魔力切れを待つべきかと思ったが、そんなことをしている間にもセシリーの身は危険に晒されている。仕方なく剣を抜き、火球を『雷撃』で相殺しながら一直線に駆ける。
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