6月、高嶺の花を摘みに
彼は私よりも二歳年上らしい。

気づいた時にはマンションの前で。

「ちょっとここどこ?」

全く見覚えのない場所にいた。

「俺の家」

「ねぇ、っ」

家の中に連れ込まれて、ダイニングではなく他の部屋に押し込まれる。

私と手を繋いだまま彼はベッドに座り、そのまま膝の上に私を乗せてくる。

「ちょっ、重いんだしやめてよ」

そのまま後ろからハグ。

「ねーぇっ、ゆい……」

名前を口に出しかけた。

「ゆい……?」

これは完全に名前促されてる。

「結人って言わなきゃ」

意地悪なのは変わらない。

最低男だってのも変わらない。

でも、声だけは優しかったし、さっきよりも笑顔があって。

それがよりいい顔を引き立てていた。
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