□TRIFLE□編集者は恋をする□

 
「こんなの、ダメ……っ。仕返しにならないよ」

「ん?」

「だって、気持ちよすぎて……。もう、おかしくなりそう……」

息を荒げ、途切れ途切れでそう言った私に、片桐は耳元で小さく笑った。

「お前は天然でそういう事言うよな」

「あ……、んっ。なに……?」

「なんでもない」

静かにそ首を横に振った片桐は、私の手に指を絡めた。
ぎゅっと手を繋ぎながら、また激しく動き出す。
何度も打ちつけられる快楽に、私は必死で手を握り返した。

「由依……」

片桐の低い声が私の名前を呼ぶ。
それだけで全身がきゅっと反応して震えてしまう。

好きな人に名前を呼ばれるだけで、こんなに幸せになれるんだなんて。
そんなこと、28年間生きてきて今はじめて知った。

「ん、匠……っ。すき……」

上擦った私の小さな声に、片桐は優しく微笑んだ。



□TRIFLE□16□END□

< 351 / 396 >

この作品をシェア

pagetop