そして消えゆく君の声
 眉をよせて顔をしかめながら、けれど、心の中でほっと息をつく。


(良かった、話題がそれて)


 口元を安堵に緩ませて、私は窓ガラス越しの青空を見上げた。

 雲ひとつない晴天に、白く輝く太陽。

 いつも羽織っているカーディガンが、今日はちょっと暑かった。


「なんか六月みたいな気温だね」

「本当にねー。桂大丈夫?この前貧血おこしてたでしょ」

「ありがと、気をつける」

「今日の体育外だしさ、ただでさえ紫外線やばいのに昼前とか最悪」

「はいはい、がんばろうね」


 わめく雪乃をなだめながら教室へ向かう。

 窓側の肩口に、熱があつまるのを感じながら。


(陽射し、つよいなあ)


 窓から差しこむ陽は目に痛いほど眩しくて、初夏の訪れがちらつくようで。

 あまり身体の強くない私にとっては、さわやか半分、憂鬱半分な陽気だった。
 
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