そして消えゆく君の声

決意

  次の日。


 三時間目から登校してきた黒崎くんは「おはよう」と話しかけた私の目も見ずに机に突っ伏してしまった。
 
 話しかけるな、と言わんばかりの態度。

 思わず怯みそうになるけど、こんなことで一々落ち込んでいたら征一さんの話なんてできるはずがない。


 それに、私はまだ幸記くんに返事をしていない。


 あれほど真剣に、気持ちを伝えてくれた幸記くん。

 早く返事をしないと。
 ちゃんと打ち明けないと。
 でも、黒崎くんがしゃべってくれないと、幸記くんとだって話しにく――――


(違う)


 そこまで考えて、首を振る。

 それは違う。
 ただのこじつけだ。

 いくら黒崎くんが私を避けていても関係ない。あの後も何度か電話をしたし、話を切り出す機会はいくらでもあった。

 短い時間なら直接話すことだってできたかもしれない。


 私はただ、黒崎くんの態度を理由に幸記くんと話すことを先延ばしにしていただけ。


 黒崎くんと話せないからとか、幸記くんを傷つけるからとか自分に言い訳して、いい人のふりをして逃げていただけだった。
 
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