そして消えゆく君の声
「…………」


 気持ちが落ちつかない。
 不安にざわめく胸をおさえて、私は何度も歪んだ文字をなぞった。

 知りたい。

 知りたくてしょうがなかった。黒崎くんのことが。彼の真意が。


 どうして周りと距離をとるのか。

 どうして怪我をしたのか。

 傷は痛くないのか。

 つらくないのか。


(教えてほしい)


 小さな泡のようにわきあがる重たい不安と、何かを求める気持ち。

 二つの想いに押し出されて、私はぽつりと呟いた。



「……知りたいよ、黒崎くん」



 その気持ちの正体には、気付かないまま。
 
< 23 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop