そして消えゆく君の声
 ケンカじゃない。避けられていた頃よりはずっと話せるようになったし、秘密もなくなった。

 背を向けた黒崎くんを引き止めて、想いを伝えて。何年も隠し続けていた領域を、無理やり覗きこんで。


「……急ぎすぎて、黒崎くんを傷つけたのかもしれない」


 ようやく触れた真実は、どうしようもない深く凄惨な傷を負っていた。


「私は、知れば近づけるんだと思っていた。力になれるかもと思っていた。だけど今はわからないの。黒崎くんのため黒崎くんのためって、余計なことばっかりしてるんじゃないかって」


 私に癒す力はない。何もできないのに、傷口に触れてしまった。広げてしまった。


 消えない罪。修正できない過去に対して、できることなんてあるんだろうか。

 真実を知った今ただそばにいるなんてできないのに。


「いい気になってたのかな。自分だけが理解者、なんて勘違いして」


 ぽつりと呟いた後悔の上に、沈黙がつもる。

 気を抜くと涙までこぼれてしまいそうで、グッと我慢する私を見る幸記くんの目は、静かな湖のようだった。
 
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