そして消えゆく君の声
 クリスマス当日は都合のつかない子も参加するみたいで、A4サイズの紙にはたくさんの名前が書き込まれている。


「まだ決めてないけど、角居ちゃんは参加するの?」

「うん。私文化祭の打ち上げ出てないしね」

「ふうん」


 角居ちゃんが行くなら私も行こうかなと黒板に目をやると、教卓にもたれかかって話をしていた雪乃と目があった。


 猫みたいな大きな目がにっこり微笑んで、次いでおいでおいでする左手。


 右手にはいつものようにお菓子を持っていて、なんであんなに食べてるのに太らないんだろう……なんて思いつつ近づくと、有無を言わさぬ態度でボールペンを押し付けられた。


「はい名前書いて。どうせヒマでしょ」

「何で決め付けるの。私だってたまには……」

「じゃあ何かあんの?」

「……ないけど」


 確かにその日は、気になる本を買いに行くくらいしか用事はないけど。

 クリスマス当日だって一日家族とすごすし、私のサンタクロースは両親だけど。


「まあ、これをきっかけに楽しいことが生まれるかもしれないし」

「それは私にとって? 雪乃にとって?」

「桂が楽しければ私も楽しい。いい友達でしょ。というかあんた秋の相談はどうなったのよ」


 悪気なくたずねる雪乃に、ぎくりとする。
 
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