そして消えゆく君の声
眼鏡越しの目が、柔らかく細められる。
それは、初めて見た要さんの翳りのない笑顔で、私は思わず目を見開いた。冷たいほど整った顔立ちの印象を裏切る、どこか人懐こささえ感じる笑み。
でも、それはすぐに歪みを帯びて。
「まあ、そんなわけで。いつか君が妹になっても歓迎してあげるよ」
「な、な、なんてこと言うんですか!」
「だからそういう反応するからおちょくられるんだよ、いい加減学習しないと」
手をひらひらさせる要さんにぎゅっと眉を寄せると、ふいに携帯が振動した。慌てて確認したら画面には待ちわびていた名前が表示されていて、反射的に立ち上がる。
今着いたことを告げる、短い言葉。
「ああ、ようやく来たの。階段上り下りするのだるいから、日原さん迎えに行ってくれる?」
「あ、はい。すぐ戻りますね」
「別にすぐじゃなくていいよ、ごゆっくり」
冗談か本気かわからない言葉を曖昧に聞き流して鞄をつかみ、出入り口へと向かう。
駆け足で坂道を下りながらふと後ろを振り返ると幸記くんの眠る場所が見えて、なんだか背中を押された気持ちになった。
いってらっしゃいと。
緑をはらんでそよぐ風に、あの子の優しい眼差しが重なる。
それは、初めて見た要さんの翳りのない笑顔で、私は思わず目を見開いた。冷たいほど整った顔立ちの印象を裏切る、どこか人懐こささえ感じる笑み。
でも、それはすぐに歪みを帯びて。
「まあ、そんなわけで。いつか君が妹になっても歓迎してあげるよ」
「な、な、なんてこと言うんですか!」
「だからそういう反応するからおちょくられるんだよ、いい加減学習しないと」
手をひらひらさせる要さんにぎゅっと眉を寄せると、ふいに携帯が振動した。慌てて確認したら画面には待ちわびていた名前が表示されていて、反射的に立ち上がる。
今着いたことを告げる、短い言葉。
「ああ、ようやく来たの。階段上り下りするのだるいから、日原さん迎えに行ってくれる?」
「あ、はい。すぐ戻りますね」
「別にすぐじゃなくていいよ、ごゆっくり」
冗談か本気かわからない言葉を曖昧に聞き流して鞄をつかみ、出入り口へと向かう。
駆け足で坂道を下りながらふと後ろを振り返ると幸記くんの眠る場所が見えて、なんだか背中を押された気持ちになった。
いってらっしゃいと。
緑をはらんでそよぐ風に、あの子の優しい眼差しが重なる。