そして消えゆく君の声
 中学に進学して間もない頃、校門前で見かけた時は驚いた。まさか同じ学校に進学しているとは思わなかったし、友達と笑っている姿は、記憶の中のそれとまるで変わらなかったから。

 高校で同じクラスになった時は内心気まずい思いをしたものの、すぐに不要な心配だと気付いた。

 たった一度、短時間会っただけの人間など覚えているわけがない。よっぽど深く刻まれた記憶でもない限り。


 それでも、ふとした瞬間に目で追った。

 あの人の良さそうな笑顔を。柔らかい声を。少し大袈裟な身振りを。反応は理性を裏切って、何度心に蓋をしても上手くいかなかった。


 ――だから、雨が止むのを待っている姿を見た時、これで終わりにしようと思った。


 今回だけ話をして、全部忘れる。もう見ない。考えない。こんな気持ちを抱くことは許されないし、自分が周囲にどう思われているかはよく知っている。だから、今すぐに。


「……」


 心臓が馬鹿みたいに騒ぐ。

 ほとんど吐きそうになりながら、俺は一歩足を踏み出した。なるべく無関心そうに聞こえるように気をつけながら、手の中の傘を握りしめて、やっとの思いで口を開く――




「これ、使えよ」



 
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