そして消えゆく君の声
「は……?」


 きょとんとした目に、頭の中で恥ずかしさと後悔が爆発する。


「あっ!ち、違うのっ、あの、ちょうど幸記くんに会いたいなって思ってて、だから、えっと、すぐに帰るから、お邪魔には……!」

「……」


 焦って舌が回らない。

 顔全体が沸騰したように熱くて、今にも火が出そうだった。


(なんでこんな馬鹿なこと言っちゃったんだろうー!)


 一緒に出かけたいなんていくらなんでも唐突すぎるし、せっかく兄弟で出かけようとしているのに他人が割り込んできたりしたら邪魔に決まってるし。

 しかも気付いたらテーブルに上半身が乗り上げていたし、どれだけ必死なの、恥ずかしすぎる私……っ!


「ご、ごめんなさいっ!今のはなかったことに…」


 手と首をちぎれるほど振って言葉を撤回しようとする私に、けれど黒崎くんはぽつりと答えた。


「いいけど」

「え?」

「だから、別にいいけど」


 頭の中が真っ白になる。

 必死にバツを作っていた両手を下ろして、陸にあがった金魚みたいに口をぱくぱくさせながら椅子に座りなおすと、黒崎くんはほんの少し目をそらして。
 
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