そして消えゆく君の声
「来たいなら来りゃいいだろ、幸記も日原に会いたがってたし」

「でも、迷惑じゃ」

「迷惑なら誘わない」

「……あ、ありがとう」

「礼を言われるようなことは言ってない」


 短くてぶっきらぼうな言葉は、どこか照れているようにも聞こえて……って、それは希望的観測だけど。

 とにかく迷惑そうな響きではなかったから、痛いほど騒いでいた心臓がすこしだけ収まってくれた。


 それでもまだドキドキしているのは、多分、嬉しさと、緊張の名残のせい。


「その、楽しみにしてるね」

「ああ。幸記にもそう伝えとく」

「幸記くんに会えるのもだけど、それだけじゃなくて」

「……?」

「残りは、秘密」


 浮かれた心が余計なこと……例えば「黒崎くんと一緒にいられて嬉しい」とか「もっとたくさん話したい」とか、そういうことを口走らないように、私は何度も熱い紅茶をのどに流し込んだ。



「……なんだよ、秘密って」



 丸いカップから立ちのぼる湯気。

 白っぽく色づいた空気の向こうに見えた黒崎くんの顔は、ひどく不思議そうだった。
 
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