私が本物の令嬢です!

 ふたりがしばらく抱き合っていると、扉を叩く音がした。
 セオドアが扉を開けると、グレンが入室した。

「感動の再会はそれくらいで十分だろ。あとは解決したあとにな」
「ああ、そうだな。グレン、しばらく彼女をここに置いてくれないか?」
「お前の婚約披露パーティまでならいいぜ」

 それを聞いたセオドアは怪訝な表情になった。


「俺に偽物令嬢との婚約披露パーティをしろと言うのか?」
「相手は偽物でも、もう決まっていることだろ? お前にはどうしようもねぇよ」
「そ、そうだが……しかし」

 困惑の表情でちらりと目線を向けるセオドアに、フローラは気まずくなり目をそらした。


 そうだ。マギーとの婚約披露パーティは、すぐそこに迫っている。
 パーティにはたくさんの貴族たちがゲストとして招かれる。
 そこで披露されたセオドアとマギーは周囲に認められながら結ばれることになる。
 彼らの結婚は一気に社交界を駆けめぐるだろう。

 想像しただけで、フローラは絶望感に打ちひしがれた。



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