私が本物の令嬢です!

 意識を消失しそうになると、呪術師が使用人に命令し、フローラは頭から水をかけられた。


「さあ、終わりましたよ。これで、この子は自分の名前も身分も口にすることができない」
「それはいつまで持続する? しばらくは名乗られると困るのだが」

 伯爵の問いに呪術師が答える。


「呪いを解かない限り、一生名乗れないでしょう」

 それを聞いた伯爵はにやりと不気味な笑みを浮かべた。
 マギーはフローラの髪をつかんで、煽り立てる。


「ほら、自分の名前を言ってみなさいよ。ほら、早く言いなさい」
「うっ……ふ……」

 名前を口にしようとすると声が出なくなる。
 それを見たマギーは目を見開いて嘲笑する。


「あはははは、惨めだわね。今日から私がフローラよ。公爵さまと結婚するのはこの私。あははははは!」


 フローラはマギーを睨みつけながら涙を流した。


< 5 / 97 >

この作品をシェア

pagetop