私が本物の令嬢です!

 フローラとマギーはどちらも父親似であり、金髪碧眼である。
 10年も会っていなければ、フローラとマギーの入れ替わりに気づくことは難しいだろう。

 それでも、フローラは胸中で必死に訴える。

 フローラは私よ!
 お願い、セオドアさま。
 気づいて!!!


「お久しぶりですね、ナスカ令嬢。10年前に一度お会いしましたが、覚えていらっしゃいますか?」
「えっ……」

 マギーは一瞬、ぎょっとした顔をしたが、すぐに笑顔で答えた。

「も、もちろんですわ!」
「そうか、よかった。もうお忘れになっているかと思いました」

 セオドアは安堵したように微笑んだ。


 そうだ。
 10年前はまだマギーはこの家にはいない。
 あのとき、この家の令嬢はフローラだったのだ。

 フローラはセオドアを遠目で見つめて悲しくなった。


 覚えているわ。
 あなたと将来、結婚すると約束したあの場所のことも!
 
 そんな声が、彼に届くことはない。


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