私が本物の令嬢です!

「お、と……さま、ゆる、ひ……」

 伯爵の剣先がわずかにマギーの首に刺さり、じわりと血があふれ出す。

「黙っていろ。ああ、もうおしまいだ。くそっ! フローラ、お前が私の子なら何の問題もなかったんだ。だが、私には信じられん。フローラを見るたびにあの男の顔が浮かぶんだ。あの男が……」

 伯爵はぐらりと眩暈がして、マギーに向けた剣を落とした。
 マギーはとっさに剣を拾い、それを両手で握って伯爵に向ける。


「お父さま……私を殺すつもりなら、私がお父さまを殺すわ……」
「うるさい。私はお前も娘だと思ったことは一度もない。汚らしい娼婦の娘が!」
「ひ、酷い! お父さまが私とお母さまをお屋敷に呼んでくださったんじゃないの? 今さらそんなこと……」
「お前は、私が気分転換に一度遊んだだけで出来たんだ。それがなければお前なんか生まれてこなかった。これもあの男のせいだ。リリアがあの男のことを忘れていれば、私がよその女を抱くこともなかったのだ。すべて、あの忌まわしい男が悪い!」



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