シンデレラ・ウェディング


お母さんとお姉ちゃん、それから充さんの分のコーヒーを淹れ終わるとおぼんに乗せてダイニングテーブルへと運んだ。


3人の前にコーヒーを置いても、もちろんお礼なんてない。これが我が家の当たり前。私なんて気にも止めず話に夢中になっている。


「ねぇ〜早くドレスの試着に行きたいんだけど〜っ、充くんいつにする?」


「有紗に合わせるよ。仕事は調整できるから」


「さっすが〜充くん!旦那さんになる人がブルーティアーズの企画部部長なんて私も鼻が高いよっ」


栗色のセミロングの髪を揺らしながら、大きな目をぱちぱちさせて充さんを見上げている。


お姉ちゃんと充さんはもうすぐ結婚するらしい。もちろん面と向かって言われたわけじゃなくて、こうやって勝手に話を聞いて知ったことだけれど。


充さんが勤めているblue tears という会社は高級ジュエリーブランドの会社だ。元々老舗の宝石店だったが人気はイマイチだった所を、社長の息子さんがメスを入れ今の社名に変更し、人気と地位を引き上げたらしい。


お姉ちゃんはいつも自慢のようにブルーティアーズと口にしている。


「まだいたの?もう部屋に行っていいわよ」


キッチンでお盆を片付けていると、冷蔵庫にお酒を取りに来たお母さんが私の顔も見ずに冷めた声でそう告げた。


「はい。おやすみなさい」


もちろん、返事はない。


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