翔ちゃんは、幽霊なんて信じな、い?

プロローグ

 これは私、藤倉真名が通う百鬼高校に伝わる、ちょっと変わった七不思議ならぬ五不思議のお話だ。

 百鬼高校にはお化けにまつわる三不思議……3つの怪談がある。
 それを全て踏破すると、百鬼高校のカミサマが願いを叶えてくれるという物だ。

 そのような物を高校生になって信じる人がいるのか、はたまた試した人は過去にいるのかその辺はさておいて。

 ともかくそれを試そうとしたのが、日野翔次郎こと通称・翔ちゃんだ。

 翔ちゃんは高校生にしてどこか寂しげで儚げな色気を持つ、学園の王子的存在で何を隠そう私の想い人でもある。

 翔ちゃんが好きすぎて身の程知らずにも金魚のフンと化した私は、

『これ試してみようと思うんだけど、お前も一緒に行く?』

 なんて聞かれたら、ウキウキで二つ返事してしまう訳で。

『じゃ今日の22時。学校でな』


 と、まあこうして夜の学校に来たのだ。
 当初の予定ではお化けに驚いた私が翔ちゃんに抱きつくとか、そういうイベントが発生するハズだったんだけど……。


 何故か私は今、パソコン室でパソコンのモニター枠に嵌っていた。

 うん、自分でも何言ってるかわからないけど、紛れもない事実だ。その姿は、さながらテレビから出てくる途中の貞◯のパソコンverの様。
 貞◯と唯一違うのは、出てこようとしてるんじゃなくて、画面の中に引きずり込まれないように必死でモニター枠にしがみついてる事だった。

 いや冷静に分析してるけど、中々にピンチである。


「翔ちゃん! 翔ちゃーん!? 起きて!! たーすーけーてー!!」

 私がパソコンの画面に引きずり込まれてる真横で、天使の寝顔さながらに眠っている翔ちゃん。起きる気配は全くない。

「真横で大声出してるのに何で起きないの?! 寝顔可愛いっ!ってそんなこと言ってる場合じゃなかったー!!」

 悲しい1人ツッコミが夜のパソコン室に響き渡る。
 返答する者が当然誰もいない教室には、翔ちゃんの規則正しい寝息だけが聞こえていた。

「何でこんな事になってんのー?!!」
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