契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「こんなに美味しいケーキははじめて食べたとか言ってたな。カレーを食べたあとに、どうして四つも食べられるのか私にはさっぱりわからないが」
お腹いっぱいだと言いながら、幸せそうに食べていた楓を思い出して、和樹はくっくっと笑う。
黒柳が、驚いたように問いかける。
「四つもお買いになられたんですか?」
「ああ、妻の好みがよくわからなかったんだ。もちろんケーキを一緒に食べたのははじめてではないが、彼女はスイーツに目がなくてね。どの種類のケーキも美味しそうに食べるから、迷ってしまって」
答えると、黒柳はこの話に一気に興味を失ったようだ。口を閉じて向こうを向いてしまった。
和樹も車窓に目を移した。
都会の街の上に広がる雲ひとつない青い空を見上げながら、和樹は自分がある結論に達しているのを感じていた。
夫婦というものについてだ。
彼女を自分の妻らしくなれるよう指導すると宣言しておきながら、本当のところ和樹には、どうすればいいかという具体的なビジョンを描けていたわけではない。
実際、彼女のビジュアルについて、少し手を加えるくらいしかできていない。
それは和樹自身が、どうすれば周りから夫婦に見られるのかということがわからなかったからだ。
誰かを愛し愛される。
生涯を共にしたいと願う。
和樹にとっては、こんな話はフィクションの中だけの感情だったから。
——今だって、はっきりと理解しているわけではない。
だけどそれこそが夫婦というもので、見てくれなどはあまり重要ではないことは、今はっきりとわかった。
同じものを一緒に食べて、何気ない時間を共有し、くだらないことで笑い合う。
金曜日の夜に、楓と過ごしたあのような時間を積み重ねていくのが夫婦というものなのだ。
——でも彼女とは、本当の夫婦でない。
互いに特別な感情は必要ないと確認し合った関係だ。そうならないことこそが重要だと、和樹は彼女に宣言した。
そのことに思いを馳せて、和樹の胸に複雑な感情が広がっていく。
ついさっきまで感じていた浮き立つような感情の居場所を自分の中に見つけられないでいる。
本来なら、このような感情は消し去ってしまうのが正解だ。
そうするしか道はない。
それはわかっているけれど……。
ヘッドレストに頭を預けてため息をつくと、前方に太陽の光を反射させる三葉商船本社ビルが見えてくる。
あのビルの五階で、楓は今も仕事に打ち込んでいる。
そこへ向かって自分の中の熱い思いが真っ直ぐに走り出すのを和樹は確かに感じている。
まさか自分の中にあるとは思わなかった、はじめての感情だ。
止めなくてはいけないと、もうひとりの自分が言う。なにより楓がそれを望んでいないのだ。和樹の思いは不用どころか迷惑でしかないだろう。
……それなのに。
それはとほうもなく難しいことのように感じていた。
お腹いっぱいだと言いながら、幸せそうに食べていた楓を思い出して、和樹はくっくっと笑う。
黒柳が、驚いたように問いかける。
「四つもお買いになられたんですか?」
「ああ、妻の好みがよくわからなかったんだ。もちろんケーキを一緒に食べたのははじめてではないが、彼女はスイーツに目がなくてね。どの種類のケーキも美味しそうに食べるから、迷ってしまって」
答えると、黒柳はこの話に一気に興味を失ったようだ。口を閉じて向こうを向いてしまった。
和樹も車窓に目を移した。
都会の街の上に広がる雲ひとつない青い空を見上げながら、和樹は自分がある結論に達しているのを感じていた。
夫婦というものについてだ。
彼女を自分の妻らしくなれるよう指導すると宣言しておきながら、本当のところ和樹には、どうすればいいかという具体的なビジョンを描けていたわけではない。
実際、彼女のビジュアルについて、少し手を加えるくらいしかできていない。
それは和樹自身が、どうすれば周りから夫婦に見られるのかということがわからなかったからだ。
誰かを愛し愛される。
生涯を共にしたいと願う。
和樹にとっては、こんな話はフィクションの中だけの感情だったから。
——今だって、はっきりと理解しているわけではない。
だけどそれこそが夫婦というもので、見てくれなどはあまり重要ではないことは、今はっきりとわかった。
同じものを一緒に食べて、何気ない時間を共有し、くだらないことで笑い合う。
金曜日の夜に、楓と過ごしたあのような時間を積み重ねていくのが夫婦というものなのだ。
——でも彼女とは、本当の夫婦でない。
互いに特別な感情は必要ないと確認し合った関係だ。そうならないことこそが重要だと、和樹は彼女に宣言した。
そのことに思いを馳せて、和樹の胸に複雑な感情が広がっていく。
ついさっきまで感じていた浮き立つような感情の居場所を自分の中に見つけられないでいる。
本来なら、このような感情は消し去ってしまうのが正解だ。
そうするしか道はない。
それはわかっているけれど……。
ヘッドレストに頭を預けてため息をつくと、前方に太陽の光を反射させる三葉商船本社ビルが見えてくる。
あのビルの五階で、楓は今も仕事に打ち込んでいる。
そこへ向かって自分の中の熱い思いが真っ直ぐに走り出すのを和樹は確かに感じている。
まさか自分の中にあるとは思わなかった、はじめての感情だ。
止めなくてはいけないと、もうひとりの自分が言う。なにより楓がそれを望んでいないのだ。和樹の思いは不用どころか迷惑でしかないだろう。
……それなのに。
それはとほうもなく難しいことのように感じていた。