契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
日が暮れて真っ暗になった三葉家の庭。普段は整然と庭木が並んでいる庭に、ごうごうと強風が荒れ狂っている。
楓はため息をついてブラインドを下げた。
夏の盛りを少し過ぎたこの日の夜、今年はじめて台風が都内を直撃した。
三葉家の建物は普通の戸建住宅よりはるかに頑丈で、建物自体が揺れたりすることはない。
それはわかっていても、不安な気持ちは収まらない。
時刻は午後十一時をすぎている。
予報では明日の朝までには暴風域を抜けるとあったから、明日は普段通り出勤できるだろう。だからもう寝た方がいいとわかっていても、とても眠れそうになかった。
温かい飲み物でも取ってこようと思い、楓は別棟を出る。
嵐の夜は、少し気温が低く、肌寒く感じるくらいだった。
リビングはまだ電気が着いていて、和樹がソファで本を読んでいた。
相変わらず忙しくしている彼だが、あらかじめ台風が直撃することがわかっていた今夜は早めに帰宅した。
以前なら在宅時は、決まって書斎にこもっていたが、最近はリビングにいることも多かった。
なにをするわけでもなく、本を読んだりテレビを見たりしている。都合がつけば楓の作る夕食を一緒に囲むこともあった。
楓の方も変化があった。彼の姿を目にするとドキドキしてしまうのも相変わらず。
だが以前のように気まずいという思いはしなくなった。
こうして家で彼の姿を目にすることを自然に受け止められるようになっている。
キッチンへ向かう楓に気がつき和樹が顔を上げた。
「まだ起きてたのか」
「はい。お茶を飲もうと思って」
答えてキッチンで温かい茶を淹れる。それで用は済んだわけだが、すぐに別棟に戻る気にはなれなかった。
本棟は別棟よりも建物自体が大きいからか、風の音が少しましだ。
和樹がいるということにもどこか安心感を覚えた。
なんとなく楓はリビングへ行き彼が座っている大きなコーナーソファの反対側に腰を下ろす。温かいお茶をすすっていると和樹が首を傾げた。
「どうした? 眠れないのか?」
リビングの大きな窓に視線を送り、楓はため息をついた。
「風がうるさくて」
和樹が眉を寄せた。
「……顔色が悪いけど」
「ちょっと、風の音が苦手っていうか……。でも大丈夫です」
曖昧に答える。それで彼は納得しなかった。
「大丈夫って感じじゃないな」
「そんなことは……。本当に大丈夫です。このお茶を飲んだら戻ります」
和樹が持っていた本を置いた。
楓はため息をついてブラインドを下げた。
夏の盛りを少し過ぎたこの日の夜、今年はじめて台風が都内を直撃した。
三葉家の建物は普通の戸建住宅よりはるかに頑丈で、建物自体が揺れたりすることはない。
それはわかっていても、不安な気持ちは収まらない。
時刻は午後十一時をすぎている。
予報では明日の朝までには暴風域を抜けるとあったから、明日は普段通り出勤できるだろう。だからもう寝た方がいいとわかっていても、とても眠れそうになかった。
温かい飲み物でも取ってこようと思い、楓は別棟を出る。
嵐の夜は、少し気温が低く、肌寒く感じるくらいだった。
リビングはまだ電気が着いていて、和樹がソファで本を読んでいた。
相変わらず忙しくしている彼だが、あらかじめ台風が直撃することがわかっていた今夜は早めに帰宅した。
以前なら在宅時は、決まって書斎にこもっていたが、最近はリビングにいることも多かった。
なにをするわけでもなく、本を読んだりテレビを見たりしている。都合がつけば楓の作る夕食を一緒に囲むこともあった。
楓の方も変化があった。彼の姿を目にするとドキドキしてしまうのも相変わらず。
だが以前のように気まずいという思いはしなくなった。
こうして家で彼の姿を目にすることを自然に受け止められるようになっている。
キッチンへ向かう楓に気がつき和樹が顔を上げた。
「まだ起きてたのか」
「はい。お茶を飲もうと思って」
答えてキッチンで温かい茶を淹れる。それで用は済んだわけだが、すぐに別棟に戻る気にはなれなかった。
本棟は別棟よりも建物自体が大きいからか、風の音が少しましだ。
和樹がいるということにもどこか安心感を覚えた。
なんとなく楓はリビングへ行き彼が座っている大きなコーナーソファの反対側に腰を下ろす。温かいお茶をすすっていると和樹が首を傾げた。
「どうした? 眠れないのか?」
リビングの大きな窓に視線を送り、楓はため息をついた。
「風がうるさくて」
和樹が眉を寄せた。
「……顔色が悪いけど」
「ちょっと、風の音が苦手っていうか……。でも大丈夫です」
曖昧に答える。それで彼は納得しなかった。
「大丈夫って感じじゃないな」
「そんなことは……。本当に大丈夫です。このお茶を飲んだら戻ります」
和樹が持っていた本を置いた。