契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
——どうすればいい?
窓の外、荒れ狂う庭の木々を睨み、和樹は考えを巡らせる。
楓を欲しいというこの衝動を、どうやって昇華させればいいのだろう?
愛する人の幸せを願う。それが真実の愛だとするならば、なにも言わずに身を引くべきなのだろうか。
彼女はとうの昔に、ひとりで生きていくと決めている。
でもそうすれば、幸せそうに頬をゆるませてケーキを食べる彼女を、見ることはできなくなってしまう。
誰もいないこの家に、帰る日々が待ち受けている。
胸がぎりぎりと締め付けされるように痛かった。
——そんな未来には、耐えられそうにない。
以前の自分にとってはあたり前の世界に、怯えている自分がいる。
不安から逃れるように楓の額に口づけると、手放したくないという強烈な思いが和樹の頭を駆け巡った。
この結婚は、完全なる契約だ。
そこに愛情は必要ない。
すなわちこの激情は、契約違反にほかならない。
三葉家の長男として、和樹は常に誠実を心情に数々の修羅場を乗り越えてきた。最終的にはそれが会社と自己にとって有利になるからだ。
契約違反など言語道断、一度たりともしたことがない。だが今回だけはその信条を違えようと、和樹は決意する。
今はまだ、腕の中にある甘やかな存在。彼女を手放したら一生後悔することが、目に見えているからだ。
可能性はゼロではない。
楓の方もこの生活に馴染み、楽しんでいるように思う。
和樹が触れると真っ赤に染まる頬。
恥ずかしそうに伏せるまつ毛。
その反応に望みをかけて。
——手に入れてみせる。
そう決意して、艶やかな黒い髪にキスをして和樹はゆっくりと目を閉じた。
窓の外、荒れ狂う庭の木々を睨み、和樹は考えを巡らせる。
楓を欲しいというこの衝動を、どうやって昇華させればいいのだろう?
愛する人の幸せを願う。それが真実の愛だとするならば、なにも言わずに身を引くべきなのだろうか。
彼女はとうの昔に、ひとりで生きていくと決めている。
でもそうすれば、幸せそうに頬をゆるませてケーキを食べる彼女を、見ることはできなくなってしまう。
誰もいないこの家に、帰る日々が待ち受けている。
胸がぎりぎりと締め付けされるように痛かった。
——そんな未来には、耐えられそうにない。
以前の自分にとってはあたり前の世界に、怯えている自分がいる。
不安から逃れるように楓の額に口づけると、手放したくないという強烈な思いが和樹の頭を駆け巡った。
この結婚は、完全なる契約だ。
そこに愛情は必要ない。
すなわちこの激情は、契約違反にほかならない。
三葉家の長男として、和樹は常に誠実を心情に数々の修羅場を乗り越えてきた。最終的にはそれが会社と自己にとって有利になるからだ。
契約違反など言語道断、一度たりともしたことがない。だが今回だけはその信条を違えようと、和樹は決意する。
今はまだ、腕の中にある甘やかな存在。彼女を手放したら一生後悔することが、目に見えているからだ。
可能性はゼロではない。
楓の方もこの生活に馴染み、楽しんでいるように思う。
和樹が触れると真っ赤に染まる頬。
恥ずかしそうに伏せるまつ毛。
その反応に望みをかけて。
——手に入れてみせる。
そう決意して、艶やかな黒い髪にキスをして和樹はゆっくりと目を閉じた。