契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
パーティ会場から去っていく楓の背中を見送って、和樹は心底申し訳ない気持ちになる。
本当は、このような華やかな場所は苦手であろう彼女に、重役を務めされているということに対してだ。
契約の目的を達成するためには仕方ない、これが彼女の役割だ、という思いはもはやない。
ただ、自分のために彼女に負担をかけたくないという思いだけが和樹を支配している。
そもそもふたりが本当に愛情のみで結ばれた夫婦なら、和樹は彼女にこのような苦手なことを要求したりはしなかった。
そばにいてくれるだけで十分なのだから。
とはいえ、今のふたりの関係性で「出席しなくていい」と言うのは、すなわち契約解除を表すことになる。
連れてくるしかなかったのだ。
このパーティで彼女は十分過ぎるほど和樹の妻の役割を果たしてくれている。
パーティも終盤に差し掛かった。
後は和樹ひとりでかまわないと、一ノ瀬から伝えさせようか、和樹がそう思った時。
「副社長」
声がかかり振り返る。取引先の河井鉄鋼の社長だった。
河井鉄鋼は百人ほどの規模でそれほど大きくはない会社だが、世界でもここにしかないという技術があり、祖父の頃から付き合いがある。
父と同じ歳の社長とも和樹は親しく付き合っている。
「河井社長、お越しくださいましてありがとうございます。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「いやいや、気にしないでください。私などよりも挨拶するべき方はたくさんいらっしゃるだろう」
河井が柔和な笑みを浮かべた。
「それにしても盛大なパーティですな」
「クイーンクローバー号が無事就航に漕ぎ着けたのも、社長はじめ御社の技術者の方々のおかげです」
心を込めて和樹は言う。船の安全な航行は、数えきれない人々の汗と涙と努力の上に成り立っている。
海運会社の役員としていつもそれを心に留めている。
河井が感慨深げに瞬きをした。
「クイーンクローバー号の就航は、私にとって娘を嫁に出すような心境です。見たい気持ちもありましたが……なにしろ私はただの町工場の親父ですから、本当は出席をためらっとったんですよ。だが、どうしても須之内さんの晴れ姿見たくてこうして参りました」
楓の旧姓を口にした河井に、和樹は首を傾げた。
「河井社長は、妻をご存知なんですか?」
「ええ、仕事の方で関わりがあります」
「なるほど」
彼女が所属している経理課の方かと和樹は合点した。
本当は、このような華やかな場所は苦手であろう彼女に、重役を務めされているということに対してだ。
契約の目的を達成するためには仕方ない、これが彼女の役割だ、という思いはもはやない。
ただ、自分のために彼女に負担をかけたくないという思いだけが和樹を支配している。
そもそもふたりが本当に愛情のみで結ばれた夫婦なら、和樹は彼女にこのような苦手なことを要求したりはしなかった。
そばにいてくれるだけで十分なのだから。
とはいえ、今のふたりの関係性で「出席しなくていい」と言うのは、すなわち契約解除を表すことになる。
連れてくるしかなかったのだ。
このパーティで彼女は十分過ぎるほど和樹の妻の役割を果たしてくれている。
パーティも終盤に差し掛かった。
後は和樹ひとりでかまわないと、一ノ瀬から伝えさせようか、和樹がそう思った時。
「副社長」
声がかかり振り返る。取引先の河井鉄鋼の社長だった。
河井鉄鋼は百人ほどの規模でそれほど大きくはない会社だが、世界でもここにしかないという技術があり、祖父の頃から付き合いがある。
父と同じ歳の社長とも和樹は親しく付き合っている。
「河井社長、お越しくださいましてありがとうございます。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「いやいや、気にしないでください。私などよりも挨拶するべき方はたくさんいらっしゃるだろう」
河井が柔和な笑みを浮かべた。
「それにしても盛大なパーティですな」
「クイーンクローバー号が無事就航に漕ぎ着けたのも、社長はじめ御社の技術者の方々のおかげです」
心を込めて和樹は言う。船の安全な航行は、数えきれない人々の汗と涙と努力の上に成り立っている。
海運会社の役員としていつもそれを心に留めている。
河井が感慨深げに瞬きをした。
「クイーンクローバー号の就航は、私にとって娘を嫁に出すような心境です。見たい気持ちもありましたが……なにしろ私はただの町工場の親父ですから、本当は出席をためらっとったんですよ。だが、どうしても須之内さんの晴れ姿見たくてこうして参りました」
楓の旧姓を口にした河井に、和樹は首を傾げた。
「河井社長は、妻をご存知なんですか?」
「ええ、仕事の方で関わりがあります」
「なるほど」
彼女が所属している経理課の方かと和樹は合点した。