契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
河井が懐かしそうな表情になった。
「あれは確か二年前でしたかな。御社と我が社の間で経理上のトラブルが発生したのです。その時に御社の飯田課長と一緒に経緯の説明に来られたのが、奥さまだったのです」
こちらから出向いたということは、自社側に非があったということだろうか。
「奥さまは、トラブル発生の経緯をわかりやすく説明してくださった。そして迅速に対応し、解決に導いてくださった。しかもこちらが恐縮するくらい丁寧に謝罪してくださって……。感服しましたよ。トラブルなんてない方がいいに決まっているのに、お会いできてよかったと思ったくらいですから」
そう言って河井はカラカラと笑った。
「以来、なにかと頼りにさせてもらっています。初対面の時からずっと変わらず、仕事は正確で速い、かつ対応も丁寧だ。さすが、三葉商船の経理課だといつも感心しています。御社に伺った際は必ず経理課に寄って、挨拶をさせてもらっています。副社長との結婚されたと聞いた時は驚きましたが、さすがは副社長だ、お目が高いと思いました」
楓に対する賞賛の言葉に和樹は誇らしい気持ちになる。
だが、最後の『お目が高い』の言葉にはなんと答えるべきかわからなかった。
河井が和樹に身を寄せて少し声を落とした。
「本当は、私の息子の妻になってくれないかと、思っていたくらいなんです。彼女は、人柄がいいだけでなくずば抜けて優秀ですから。将来の社長夫人になってもらえれば、我が社は安泰だと思っとったわけです。経理は会社の要、ですから」
河井から語られる意外な話に、和樹は目を開く。
「それは……」と言いかけると、彼はにっこりと笑った。
「もちろん、もう諦めましたがね。幸せにしてあげてください。そして願わくば経理課での仕事は続けていただきたい」
「……その予定です。我が社の経理課にとってもなくてはならない存在ですから」
思わず和樹は思ったままを答えてしまう。表向き彼女は和樹の妻なのだから、謙遜しなくてはならないのに。
だが和樹と出会う前から彼女自身が積み上げてきた功績をどんな言葉でも否定するようなことは言いたくなかった。
河井が「お」と声をあげた。
「これはこれは、お熱いですな。ははは、今日はこれをお伝えしたかったんです。いやいや、安心だ。それでは私はこれで」
そう言って、彼は去っていく。その背中を見つめながら、和樹はとてつもない罪悪感に襲われていた。
彼女を結婚相手に選んだのは、彼女を愛したからではない。互いに納得済みだったはずの事実が、重く心にのしかかる。
和樹が楓を結婚相手に選んでいなければ、もしかしたら彼女には幸せな未来があったかもしれないのだ。
『鉄の女』
『融通が効かない』
社内でどう言われていようとも、経理課での人望は絶大でだからこそ課長の飯田も大切な取引先への謝罪に同行させたのだ。
「あれは確か二年前でしたかな。御社と我が社の間で経理上のトラブルが発生したのです。その時に御社の飯田課長と一緒に経緯の説明に来られたのが、奥さまだったのです」
こちらから出向いたということは、自社側に非があったということだろうか。
「奥さまは、トラブル発生の経緯をわかりやすく説明してくださった。そして迅速に対応し、解決に導いてくださった。しかもこちらが恐縮するくらい丁寧に謝罪してくださって……。感服しましたよ。トラブルなんてない方がいいに決まっているのに、お会いできてよかったと思ったくらいですから」
そう言って河井はカラカラと笑った。
「以来、なにかと頼りにさせてもらっています。初対面の時からずっと変わらず、仕事は正確で速い、かつ対応も丁寧だ。さすが、三葉商船の経理課だといつも感心しています。御社に伺った際は必ず経理課に寄って、挨拶をさせてもらっています。副社長との結婚されたと聞いた時は驚きましたが、さすがは副社長だ、お目が高いと思いました」
楓に対する賞賛の言葉に和樹は誇らしい気持ちになる。
だが、最後の『お目が高い』の言葉にはなんと答えるべきかわからなかった。
河井が和樹に身を寄せて少し声を落とした。
「本当は、私の息子の妻になってくれないかと、思っていたくらいなんです。彼女は、人柄がいいだけでなくずば抜けて優秀ですから。将来の社長夫人になってもらえれば、我が社は安泰だと思っとったわけです。経理は会社の要、ですから」
河井から語られる意外な話に、和樹は目を開く。
「それは……」と言いかけると、彼はにっこりと笑った。
「もちろん、もう諦めましたがね。幸せにしてあげてください。そして願わくば経理課での仕事は続けていただきたい」
「……その予定です。我が社の経理課にとってもなくてはならない存在ですから」
思わず和樹は思ったままを答えてしまう。表向き彼女は和樹の妻なのだから、謙遜しなくてはならないのに。
だが和樹と出会う前から彼女自身が積み上げてきた功績をどんな言葉でも否定するようなことは言いたくなかった。
河井が「お」と声をあげた。
「これはこれは、お熱いですな。ははは、今日はこれをお伝えしたかったんです。いやいや、安心だ。それでは私はこれで」
そう言って、彼は去っていく。その背中を見つめながら、和樹はとてつもない罪悪感に襲われていた。
彼女を結婚相手に選んだのは、彼女を愛したからではない。互いに納得済みだったはずの事実が、重く心にのしかかる。
和樹が楓を結婚相手に選んでいなければ、もしかしたら彼女には幸せな未来があったかもしれないのだ。
『鉄の女』
『融通が効かない』
社内でどう言われていようとも、経理課での人望は絶大でだからこそ課長の飯田も大切な取引先への謝罪に同行させたのだ。