契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
なるほど、直前までロンドンにいたというならば男性のこのようなスマートな振る舞いも納得だ。
 
男性がウイスキーグラスひと口飲み、カウンターへ置いた。

「結婚しなくても自立して楽しく生きれればそれでいい。君の考えには賛成だ。無理にパートナーを見つける必要はないだろう。部下にも同じように伝えたよ」
 
男性の言葉に楓の心を軽くなった。たとえ見ず知らずの相手でも自分の考えを肯定してもらえたのが嬉しかった。
 
やりがいのある仕事と、自由な生活、今の暮らしに楓は心から満足している。
 
でもその時、カウンターの上に置きっぱなしになっていた楓の携帯が震えて、また現実に引き戻されたような気持ちになる。父からの着信だったからだ。

どうやら父は話し合いを放り出して帰ってきた楓に、怒り心頭のようだ。

昼間から何度も着信がある。
 
楓は眉間に皺を寄せて携帯の電源を切った。

「でもそれを両親に納得してもらうのは至難の技です。このまま無視し続けたら東京まで来ちゃうんじゃないかな」
 
かといって電話に出てなにが変わるというわけでもなさそうだが。

「縁を切りたいくらいですが、実際にはそんなに簡単にはいかないし……」
 
男性が楓の携帯をチラリと見て「まぁ、そうだろうね」と頷いた。

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