契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「あーあ」

楓はカウンターに突っ伏した。

「やっぱり夫代行サービスに頼むしかないのかな……」

「夫代行サービス?」

「家事代行サービスみたいなやつですよ。必要な時に夫のフリをしてくれるサービスです。でも高いし短時間なんで両親を騙すことはできなさそうなんですよね……」
 
ここ最近本気で気になっていて、実際にネットで検索してみたこともある。

似たようなサービスはいくつかあるが、どれも他人向けに一時的に夫のふりをしてくれるというもので、実の両親に対して長期間にわたって騙すというのには不向きだった。
 
男性が噴き出した。

「君、面白いこと言うね。そんなサービスがあるんだ」
 
ナッツを摘んだ手をそのままにくっくっと肩を揺らしている。
 
楓は頬を膨らませた。

「切実なんですよ。未婚に対する風あたりは、男性よりも女性のほうがはるかにきついんですから。……あーあ、養ってくれなくても、一緒にいてくれなくてもいいから、対外的な夫を演じてくれる人、どこかにいないかな」

「対外的な夫か……。だが長期間にわたって夫のふりをするなら、男の方の私生活も犠牲になるし、ビジネスとしてはなかなか……でもそうだな……」
 
男性はそう言って、視線を落としなにやら考え込んでいる。

そしていいことを思いついたというように楓を見た。

「ビジネスとしては成り立たない。だが男の方にも同じような事情あれば、夫婦として成り立つんじゃないかな」

「同じような?」

「つまり形だけの妻がほしいというような」

「まぁ、そうでしょうね」
 
カクテルをひと口飲んで楓が頷くと、男性が少し身を乗り出した。

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