契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
はからずも、今夜彼女はその魅力をいかんなく発揮して世に知られることになってしまった。この数時間の間に、彼女に対するどれほどの賞賛の言葉を耳にしたしれない。

しかもそれらは、ホスト夫婦に対するお世辞などではない。
 
例えば楓が和樹との契約を終了して独り身になったとしても、さすがに河井が縁談を持ちかけることはないだろう。
 
だが今日この場で彼女を目にした海外勢は、また別だ。

彼らは、パートナーを変えることになんの躊躇も感じない。
 
人生とはすなわち愛である、婚姻中とて自由恋愛だと公言している輩もいる。
 
——彼女が誰かのものになるなど、耐えられない。
 
また弱い自分が呟いた。
 
だが、和樹には彼女の恋愛を制限する権利は持ち合わせていない。和樹と彼女を繋ぐのは、契約のみ。

しかもどちらかが止めたいと思ったら、即座に終了できるものなのだ。
 
例えば彼女に、愛する者ができたとして……。

「副社長? お疲れでございますか?」
 
一ノ瀬に、声をかけられて、和樹はハッとしてその考えにストップをかける。

瞬時に頭を切り替えようと試みる。
今はパーティに集中すべき時間だ。

「いや、大丈夫だ」

「そうですか。あと三十分で終了のお時間です」

「わかった」

「音楽が切り替わりましたら、あちらのドアの前でお見送りを……」
 
テキパキと説明する一ノ瀬の言葉を聞きながら、和樹は胸があやしく騒ぐのを感じていた。

今夜はオーナー夫妻として、クイーンクローバー号のロイヤルスイートルームに楓とふたりで泊まることになっている。

だがさすがに同じ寝室を使うわけにはいかないからと、一ノ瀬に指示をして秘密裏に別に部屋をキープしてあった。

他の秘書たちに見つからないよう深夜に移動してそこで過ごすつもりだった。
 
そのつもりだったのだが……。
 
……将来は、なにがあるかわからない。
……彼女が誰かのものになるなど、耐えられない。
——だったら今のうちに、ものにしてしまえばいい。
 
弱気な自分の呟きに、凶暴な自分の言葉が重なるのを聞いて、和樹は目を閉じた。

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