契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「終わったぁ〜!」
午後九時半を回った三葉商船本社ビルの経理課に、男性社員の声が響く。
周りにいる他の社員もホッと息を吐いた。
楓も肩の力を抜いて、隣の亜美と顔見合わせて笑い合った。
今日は月末。経理課に取っては一カ月のうちで一番忙しい日である。
社員のワークライフバランスが徹底されている三葉商船では普段はこの時間までの残業はあまりない。が、月末は別である。
どんなに抜かりなく準備してもこのくらいの時間まではかかってしまう。
とはいえ、今月もトラブルなく終えられたと、楓は小さな充実感を覚える。それが今は特別大切なものに思えた。
和樹への愛を失った自分に残されたのは、仕事だけだからだ。
——大丈夫、仕事があれば生きていける。
胸の中にぽかりと空いた空虚な部分から目を背けて、楓は自分に言い聞かせる。
そうでないとすぐにでも、そこからガラガラとなにかが崩れてしまいそうだった。
「須之内君、病み上がりなのに初っ端からの残業で申し訳ない」
課長の飯田から声がかかる。
楓は首を横に振った。
「いえ、私の方こそ忙しい時期にお休みをいただいてしまいまして、すみませんでした」
隣で亜美が口を開いた。
「それは仕方がないですよ。てか、楓さんは皆より休みが少ないんですから、もう少し休むべきです」
その時、メンバーのひとりが誰ともなく声をかける。
「打ち上げ、いつもの居酒屋でいいっすよね?」
月末を乗り越えた後、都合がつく者で遅くまでやっている居酒屋へ繰り出すのがいつものことなのだ。
「楓さん、今日はどうします?」
亜美に尋ねられて、楓はうーんと考えた。
和樹に契約終了を願いでるメッセージを送ったのが今朝のこと。楓はそのまますべての荷物が入ったスーツケースを持って家を出た。
午後九時半を回った三葉商船本社ビルの経理課に、男性社員の声が響く。
周りにいる他の社員もホッと息を吐いた。
楓も肩の力を抜いて、隣の亜美と顔見合わせて笑い合った。
今日は月末。経理課に取っては一カ月のうちで一番忙しい日である。
社員のワークライフバランスが徹底されている三葉商船では普段はこの時間までの残業はあまりない。が、月末は別である。
どんなに抜かりなく準備してもこのくらいの時間まではかかってしまう。
とはいえ、今月もトラブルなく終えられたと、楓は小さな充実感を覚える。それが今は特別大切なものに思えた。
和樹への愛を失った自分に残されたのは、仕事だけだからだ。
——大丈夫、仕事があれば生きていける。
胸の中にぽかりと空いた空虚な部分から目を背けて、楓は自分に言い聞かせる。
そうでないとすぐにでも、そこからガラガラとなにかが崩れてしまいそうだった。
「須之内君、病み上がりなのに初っ端からの残業で申し訳ない」
課長の飯田から声がかかる。
楓は首を横に振った。
「いえ、私の方こそ忙しい時期にお休みをいただいてしまいまして、すみませんでした」
隣で亜美が口を開いた。
「それは仕方がないですよ。てか、楓さんは皆より休みが少ないんですから、もう少し休むべきです」
その時、メンバーのひとりが誰ともなく声をかける。
「打ち上げ、いつもの居酒屋でいいっすよね?」
月末を乗り越えた後、都合がつく者で遅くまでやっている居酒屋へ繰り出すのがいつものことなのだ。
「楓さん、今日はどうします?」
亜美に尋ねられて、楓はうーんと考えた。
和樹に契約終了を願いでるメッセージを送ったのが今朝のこと。楓はそのまますべての荷物が入ったスーツケースを持って家を出た。