契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
契約妻の条件
プライマリーホテル七階の鉄板焼き亭『雅』にて三葉の名を告げた楓が案内されたのは、特別室だった。

楓はそこで、彼の到着を待っている。
 
ほかの客から隔離された空間は、楓に否が応でも朝の和樹の言葉を思い出させた。
 
ふたりの関係について話があると彼は言った。

今日一日、楓はこの半年間の彼との結婚生活を思い出していた。あの日結婚を決めた和樹は、すぐに話を進めた。

まず楓の実家へ行き両親に挨拶をしたのだ。
 
ビシッとしたスーツ姿で『お嬢さんを僕にください』などという時代錯誤の言葉を口にする彼は、両親が理想とする娘の結婚相手そのもので、しかも旧家の御曹司なのだから、ふたりとももろ手を挙げて賛成した。
 
本来なら眉をひそめることが予想された"今は忙しいから結婚式は時間ができた段階で。

とりあえず入籍と同居を先にする"という条件もあっさりと了承したのだ。
 
楓の悩みをなんなく解決した彼は、次に自分の両親への挨拶の段取りをつけた。

彼の父親はすなわち楓にとっては自社の社長。

さすがに当日はがちがちになったが、こちらも和やかなムードであっさりと受け入れられた。
 
そして世間に向けて結婚が発表された。ニュースは瞬く間に社内を駆け巡り社員たちは騒然となった。

特に、女性社員たちの反応は凄まじく、楓はしばらく廊下を歩くのもはばかれるくらいだった。

どこにいてもヒソヒソ言われ、敵意のある視線を感じた。

『どうしてよりによって鉄の女なのよ⁉︎ 信じられない!』

『あの地味ななりで、どうやって副社長を落としたの?』

『弱みを握って脅したんじゃない?』

『ぜんっぜん! 釣り合っていないわ』
 
ヒソヒソどころか聞こえるように言っているのでは?と思うくらいのボリュームであちらこちらから聞こえる言葉を煩わしいと思ったものの、楓は少しも傷つかなかった。
 
彼女たちがそう思うのは当然だ。

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